第34回「味ごはん」

投稿日: 2014年11月18日(火)09:50

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メグーです。食欲の秋です。
マツタケご飯に栗ごはん、「〇〇ご飯」と言えば、読者の皆様は何を思い浮かべるでしょうか。
今回のめぐみごはんは、美里の人々がこよなく愛す「美里の味ごはん」についてお送りします。

さて、味ごはん。
全国的には「味ごはん」なんて言葉は通用しませんので、ハテナ?と思われる読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、その名の通り、味のついたご飯です。
実家では「味ごはん」というと「炊き込みごはん」を指し、お米と季節の具材、調味料を一緒に炊き込むやさしいやさしい母の味。

ところが美里っ子が指す「味ごはん」は、上記とは異なるもの。
具材がしゃっきりしている!
味が濃い!
歯ごたえのある鶏肉と、ふんだんに入れられた野菜。
やさしい母の味、というより、むしろ男気すら感じるほどのダイナミックさで、おかず不要のメインディッシュ。
それが美里の味ごはんだったのです。

季節の折々におすそ分けでいただいたり、お祭りなどでふるまわれる「味ごはん」は、いつの間にやら私の大好物になり、いただく度にワーイワーイと小躍りしていたのですが、ある日夫が言い放ちました。
「作ってよ」。

ウムム、とうとう美里の味ごはんの謎に手を出す時がきたか、と覚悟を決め、リサーチしてみたところ、どうやら先に具材を炊いて、後からご飯と混ぜることが判明。
え?そんなことしたら、ご飯がべちゃべちゃにならないの?
あのギュッとしまった鶏が普通の鶏肉とは思えないけれど、あれは一体?と謎は深まるばかり。

というわけで美里に住んでウン十年。お隣のHさんをお招きして、作り方を教えていただきました。

ではでは早速作っていきましょう。
まずはお米を炊きますよ。
たくさん炊いたほうが美味しくできる!とのことで、今回は3合炊くことに。
後から煮汁ごと具を足すので、いつもの水加減から20~30ccほど少ない水加減で炊きます。
人参だけは、火を通すのと色の鮮やかさを残すために、ご飯と一緒に炊き込みます。

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ご飯を炊いている間に、具材を用意します。
ごぼうの皮をこそぎ落とし、ささがきに。
鶏肉は皮をはいで、細かく切ります。
しいたけ、しめじ、春に瓶詰しておいたタケノコも、今回は一緒に入れました。

お鍋に
水 20cc
しょうゆ 40cc
だしの素 大匙1
砂糖 小さじ1を入れ火にかけ、具材を投入します。

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「味の素はない?」と聞かれましたが、我が家にはなかったので、今回は入れませんでしたが、少し入れると美味しいとのこと。
残念そうに「少しやけどな」と笑う笑顔がなんとも可愛らしい。

なんとなく中火にかけていたのですが、「火が小さいわ」と指摘が。
どうやら具材は強火で一気に煮るようです。
なるほど具材が煮崩れもせず、鶏肉がギュッと固いのは、強火で一気に仕上げるからか・・・と納得。
鶏肉は本来、子どもを産まなくなった親鳥(ひね鶏)で作られることが多く、それで身がしまっていたとも言いますが、今はスーパーの鶏もも肉で作っているとのことです。
弱火でコトコトお肉を柔らかくとか、調味料を控えめに、なんてことは言いません。
ダイナミックです。パワフルです。
ガーッと炊き上げて、もういいの?と思う位あっという間に具が完成(火が通ればOK)です。

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ご飯が炊きあがるのを待っている間に、昔からの「味ごはん」について聞いてみました。

「昔は垣内(かいと。集落の会合)で集まった家中の全員の分を一度にお竈(くど)さんで炊いた。
鶏を丸ごと2匹ぐらいその場で絞めて。
その骨をしゃぶって食べるのが本当に美味しかった。
今は垣内の集まりもこじんまりとしたものになって、味ご飯を用意することはなくなったけど、沢山作るほうが美味しい。
今でも作るときは沢山作って近所におすそ分けして食べる。」

今でも子ども会のイベントなどで、味ごはんはおにぎりにして振る舞われます。
大量に炊いた味ごはんをみんなで食べる美味しさが、ちゃんと引き継がれているんだなーと思いました。
美里の味ごはんで育った子供たちが大人になり、その子どもたちがまたその味を受け継いでいく。
街にはない「地域の味」がそうして受け継がれていく。

話を聞きながらほっこりしている間にご飯が炊き上がりました。

煮汁ごと具材をご飯の上に広げます。
そこに日本酒を20ccほどふりかけます。
しゃもじを何箇所かザクザクと縦にいれ(かき混ぜないこと!)再度10分ほど炊飯。
最後に小口切りにしたネギを入れてかき混ぜたら完成です。

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ちなみに、上記の作り方はあくまでHさんのお宅のやり方。
今回、美里育ちの方、何人かにお話を伺ったのですが、

・鶏肉は素揚げしたものを入れる

・鶏肉の脂身も入れる

・具材を混ぜたら完成(再度、炊飯しない)

・ご飯の色が濃くなるのを避けるため、薄口しょうゆと濃い口しょうゆを半々に

・お湯を注いでお茶漬けにしても美味しい

・おにぎりにして置いてあると、おやつ感覚でついつい食べてしまう

などなどいろんなお話を伺うことができました。
それにしても、みなさん口をそろえておっしゃるのは「味ごはん、おいしいよね!」の一言。
私もこれから何度も作って、我が家の味を見つけていきたいと思います。

ちなみに美里の産直「フラワービレッジ」では、味ごはん(かしわ飯)は勿論、「味ごはん用」と書かれた鶏肉(話によると、ひね鳥、もも肉、胸肉が混ざっているそうです)も売られています。

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ぜひぜひ皆様も美里の味ごはん、味わってみてくださいね。

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ごちそうさまでした!